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大分野 放射線防護
中分野
タイトル シーベルト(Sv)
説明 放射線防護の目的で用いる実効線量等価線量及びそれらの実用量である線量当量を表現するための単位。記号は「Sv」を用いる。
ICRP2007年勧告の用語集では、シーベルト(Sv)は「等価線量、実効線量、及び実用線量のSI単位の特別な名称。単位は1キログラム当たりのジュール(J kg-1)である」と定義されている。
等価線量は、組織または臓器が放射線から受ける平均吸収線量と放射線加重係数の積として定義されており、放射線加重係数は放射線の種類や持つエネルギーによって決まるが、無名数なので、単位は吸収線量と同じくJ kg-1となる。
実効線量は、人体のすべての特定された組織及び臓器における等価線量の組織加重合計として定義される。ここでいう「特定された組織及び臓器」とは、ICRPが組織加重係数を定めている組織及び臓器(具体的には骨髄(赤色)、結腸、肺、胃、乳房、生殖腺、膀胱、肝臓、食道、甲状腺など)を示す。
実用線量は「外部被ばくを伴う状況のモニタリングと調査のための実用的な応用に用いられる線量。体内の線量の測定と評価用として定義されている」と記載されており線量当量などが該当する。
ICRP Publication 118の用語解説ではさらに「グレイ(Gy)単位の[吸収]線量をシーベルト単位に変換するには、特定のデトリメントに依存して決まる加重係数を掛ける。シーベルトは、放射線量の定量化、または組織反応(従来の「確定的影響」と同じ意味)が生じる状況におけるいかなる治療の必要性の決定に用いるべきではない。一般にそのような場合、線量をGy単位の吸収線量で示すべきであり、もし線エネルギー付与が高い放射線(例:中性子またはα粒子)が関わるならば、RBE・D(Gy)を用いることができる。」と説明されており、確定的影響についてはSvではなくGyを用いることを記載している。

もともと等価線量、及び線量当量の単位としてレム(rem)が使用されていた。この単位はSI単位系に沿っていないため、1974年の国際放射線単位測定委員会(ICRU)の会合でSI単位系への対応が検討された。その結果、ジュール/キログラム(J /kg)を尺度として、吸収線量の他にそれと関連する量に適用されるSI単位の特別名の採用を推奨する声明が作成され、国際度量衡委員会(CIPM)に送付された。
ICRPは1977年勧告〔18〕で、「線量当量の単位の特別の名称はシーベルト(Sv)である。1Sv = 1J -1 (= 100rem)」と記載し、シーベルトの単位を提唱した。
シーベルトは、1980年に、CIPMによって採択された。1984年にCIPMは、Gy(吸収線量の単位)とこの単位の違いを明確化させる解説を発行したが、等価線量の定義はICRP1990年勧告で変更されたため、それに近づけるために、2002年に解説を更新した。

日本の法令では、計量単位令第2条において線量当量の単位をシーベルトと定めている。計量単位令別表第1では線量当量の計量単位シーベルトの定義として「グレイで表した吸収線量の値に通商産業省令で定める係数を乗じた値が一である線量当量」と定めており、「通商産業省令で定める係数」は計量単位規則第5条に「別表第九に掲げる線質係数とその他の因子(1と規定されている)の積」を示す。
線質係数を示す計量単位規則別表第九は、表1のとおりである。この表はICRP1977年勧告に記載されているものと同じである。ICRP1977年勧告では、水中の線衝突阻止能(荷電粒子が水中を進むとき1マイクロメートルにつき電子との衝突により失う運動エネルギーが、1キロボルトの電位を電子が移動するときに必要とするエネルギーの何倍に相当するかを表す。)により定義されている。
日本の規制において、外部放射線に係る規制で用いる線量は一センチメートル線量当量とされており、また人の被ばくに係る規制では、外部被ばくによる実効線量は一センチメートル線量当量、内部被ばくによる実効線量は摂取量に実効線量係数(mSv/Bq)を乗じたもの、等価線量は皮膚及び目の水晶体は七十マイクロメートル線量当量、女子の腹部表面は一センチメートル線量当量を用いることとしている。したがって、実効線量、等価線量ともシーベルトを単位として表現する。

 なおシーベルト(Sievert)の名称はICRPの委員長も務めた、放射線防護に関して業績を上げたスウェーデンの科学者、ロルフ・マキシミリアン・シーベルト(Rolf Maximillian Sievert, 1896-1966)に由来している。

注:当事務局で補足のために挿入
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図表 表1 計量単位規則 別表第九
参考文献 DRESA「低線量放射線安全評価データベース」(2000年度制作 企画:文部科学省 制作:日本原子力研究所)
参照サイト
作成日 2019/03/01
更新日