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大分野 国際的機関の見解
中分野 IAEAでの議論
タイトル 白内障に関する知見の安全指針への反映
説明 2011年4月にICRPは確定的影響組織反応ともいう)に関する声明を発表した(ソウル声明と呼ばれている)。この中で、作業者の水晶体等価線量限度を、年間150mSvから100mSv/5年(ただし年間50mSvを超えない)に引き下げた。IAEAは2014年に改正された国際基本安全基準でこの限度を取り入れている。また欧州共同体(EU)のCouncil Directive2013/59/EURATOM(改訂Directive)にも新限度が記載されている。

ICRPはPublication 118 (2012年8月刊行)の中で、この線量限度決定に至った科学的根拠について、原爆被爆者やその他の疫学的調査に基づいて示している。しかしその根拠となるメカニズムについても十分明らかになっているわけではない。
(1)しきい線量の根拠
Pub.118では白内障に関する約70編の疫学論文を引用しているが、しきい線量を推定する根拠となったのは、主には3つの論文である。急性被ばくによる視覚障害性白内障のしきい線量は0.5Gyと判断された。これは原爆被爆者の成人健康調査に関する2つの論文が根拠となっている。分割・遷延被ばくのしきい線量は、チェルノブイリ事故の清掃員を対象とした調査結果から、0.5Gyよりは高くないと判断された。
(2)放射線白内障の発症機構
原爆被爆者のデータや動物実験結果から、白内障が確率的影響である可能性が議論されたが、最終的には白内障は1個の損傷細胞に起因して発症する証拠がないので、しきい線量は小さくてもあるとして、確定的影響(組織反応)であると結論付けられた。
なお、IVRに携わる術者の間で水晶体被ばくによる白内障の発症への関心も高まってきており、医療従事者の水晶体被ばくに関する研究が多く実施されている。

また線量評価の観点からも、実用量である3㎜線量当量、Hp(3)の換算係数の算出にどのようなファントムを用いるのか、中性子等の線エネルギー付与(LET)の高い放射線に対してはどのような値を使用するのかなどの問題がある。こうした点は国際的検討が進められているところである。
キーワード
図表
参考文献 Akahane et al., Jpan.H. Health Phys. 49(3)、145-152(2014) https://doi.org/10.5453/jhps.49.145
参照サイト
作成日 2015/02/28
更新日