提供: SIRABE
移動先: 案内検索
大分野 重要論文の解説
中分野 低線量率被ばく
タイトル A record-based case-control study of natural background radiation and the incidence of childhood leukaemia and other cancers in Great Britain during 1980-2006.
日本語タイトル 1980-2006年の英国における自然放射線と小児白血病やその他のがんの罹患との関係に関する記録を用いた症例対照研究
著者 GM Kendall et al.,
文献情報 Leukemia. 27(1), 3-9 (2013)
説明 (概要)英国の全国小児腫瘍登録を用いて症例・対照研究が実施され、小児がんと自然放射線の関連が評価された。解析の結果、γ線による被ばく線量の増加とともに小児白血病が有意に増加することが示されたが、ラドンについては有意な関連が見られなかった。また他の小児がんではγ線やラドンとの有意な関連は見られなかった。

低線量放射線への長期被ばくによる健康影響については確固たる知見が不足している。本研究では、小児がんと自然放射線の関連を検証するために、公的記録を用いた大規模な症例・対照研究が行われた。研究対象は、1980年から2006年に英国で生まれ、がんと診断された症例(27,447人)及び各症例に対し性と誕生日(6か月以内)をマッチさせたがんでない対照(36,793人)で、症例については全国小児腫瘍登録から抽出され、対照については症例と同じ地域の出生登録から抽出された。
 研究対象者の被ばく線量については、英国の全国データベースから子どもが出生時の母親の住所地における放射線被ばく量を、γ線の州平均及びラドンの地質学的境界によりグループ化した国内の測定に基づく予測地図を用いて推定した。γ線の骨髄累積被ばく線量1mSv当たり小児白血病の過剰相対リスク(ERR)は12%であった(95%信頼区間:3% - 22%; 両側P=0.01)。ラドンとの関係はERR 3%(95%信頼区間:4% - 11%; P=0.35)で、有意ではなかった。γ線、ラドンともに、他の小児がんについては有意な増加や減少はなかった。
 社会経済的な要因を調整しても、過剰リスクに変化はなかった。統計学的検出力が約50%と適度に保持されている本研究による統計的に有意な白血病リスクが明らかとなったが、その推定値は高線量率被ばくからのリスク予測による数値と矛盾しなかった。
 著者らは、本研究では大きなバイアスが存在する可能性は低く、また、観察された相関を説明するような交絡をもたらす因子も特定することはできないため、自然放射線による小児白血病リスク増加には因果関係がある可能性が高いと述べている。しかし、本研究で使用されている線量は基本的には地域の代表的な線量であるため、線量推定値は大きな不確かさを伴っている点などにおいて研究結果は慎重に解釈する必要がある。
キーワード 小児白血病 自然放射線
図表
参考文献
参照サイト
更新日