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大分野 | 影響 |
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タイトル | 相同組換え修復 |
説明 | 相同組換え修復は、非相同末端結合とともに、DNA二本鎖切断(DSB)修復における主要な機構の一つである。相同組換えによるDSB修復は、DSB部位周辺と同一もしくは相同な配列を鋳型とした合成によって行われる。 1.相同組換え修復の特徴 相同組換え修復は、DNAの塩基レベルで正確に復元可能であるが、鋳型となる同一もしくは相同な配列、すなわちDNA複製後の姉妹染色分体もしくは相同染色体が必要となる。ただし、ヒトを含む高等動物細胞では、相同染色体はほとんど鋳型として機能しないため、相同組換えによる修復は姉妹染色分体が存在する細胞周期のS期の後半からG2期に限定される。 2.相同組換え修復の分子機構 相同組換え修復では相同な配列の探索のために、まず、DSBの位置から一方の鎖が分解され、3'側が飛び出した一本鎖DNA部分が形成される。この工程は、最初にDNA分解酵素であるCtIP、Mre11-Rad50-Nbs1注1)複合体(MRN複合体)によって行われ、Mre11のエンドヌクレアーゼ活性により、二本鎖のうち一本(5’端を持つ鎖)に切断が入る[ 図1(1)]ところから始まる。続いてMre11のエキソヌクレアーゼ活性により、切断導入部からDS説明にBの方向に逆戻りする形で(3’-5’方向に)分解が起こる[ 図1(2)]。一方、切断導入部から5’-3’方向に向かってエキソヌクレアーゼI(ExoI)複合体に含まれるExoIによるDNA鎖の分解が起こる[ 図1(2)]。以上により、一本鎖DNA部分が完成する[ 図1(3)]。これをリセクション(resection)という。次に、一本鎖DNA部分にRPA (複製タンパク質A)が結合して安定化する[ 図1(4)]。続いて、家族性乳がんに関わるタンパク質であるBRCA1などの作用により、RPAがRad51タンパク質に置き換えられ、一本鎖DNA上にRad51が整列したフィラメントが形成される[ 図1(5)]。Rad51は相同鎖の探索と鎖交換反応を触媒する。相同鎖が見つかれば、切断部位から鋳型鎖に沿ってDNA複製と同様のDNA合成が行われる[ 図1(6)]。合成された鎖が鋳型鎖から離れ、DSBの反対側の一本鎖と対合し、さらにDNA合成によってギャップが補完されて修復が完了する[ 図2 ](Synthesis-dependent strand annealingモデル)。あるいは、損傷部位の両側で損傷鎖と鋳型鎖が絡まりあったホリデー構造(ホリデージャンクションともいう)ができる。ホリデー構造は二重らせんの巻き戻しによって前後に移動可能であり、また、ホリデー構造の両側で回転する(ねじる)ことが可能である。2つのホリデー構造が近づいていくと解消される。この反応はBLMとトポイソメラーゼIIIαによって行われる。ホリデー構造は4本のうち2本の鎖を切断することによって解離され、修復が完了する。これをリゾリューション(resolution)という。[ 図3 ] 注1)Nbs1は突然変異によって機能が失われると放射線高感受性遺伝病ナイミーヘン染色体不安定性症候群を引き起こすタンパク質である。 |
キーワード | MRN複合体、リセクション、Rad51、姉妹染色分体 |
図表 | 図1 図2 図3 |
参考文献 | ・「放射線医科学」、大西武雄監修、医療科学社、東京 (2016) |
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作成日 | |
更新日 | 2020/03/25 |
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