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大分野 影響(生体応答・生物影響・健康影響を含む)
中分野 分子レベルの反応
タイトル 突然変異
説明 遺伝子DNAの塩基配列がさまざまな原因で本来と異なる配列に変化したり、遺伝子の量が変わったりすることによって、本来の遺伝情報に基づいていた表現型が変化あるいは消失する現象を突然変異という。

1. 突然変異の分類
遺伝子レベルでの塩基配列の変化は遺伝子突然変異、染色体レベルで構造や数に変化がみられる場合には染色体突然変異という。また、染色体数や遺伝子コピー数の変化によって突然変異を生じる場合をゲノム突然変異と呼ぶことがある。

遺伝子や染色体の構造変化の原因にはさまざまな物理的な要因や化学物質によるDNA分子の修飾、ウイルス感染、DNA複製や修復時のエラーなどが考えられ、変化を誘発する要因の起源によって、自然突然変異や人為的突然変異という分類もされる。農業や園芸の分野では人為的突然変異によって配偶子に変異を導入し、人類にとって有用な形質を発現するようになった個体を選択することで、新品種を作り出すのにも利用されている。

また、突然変異が発生した細胞の種類によって、体細胞突然変異(幹細胞や機能細胞に発生)と生殖細胞突然変異(生殖細胞に発生)に区別する分類もある。後者では誘発された突然変異が次世代へと継代される可能性がある。

2. 放射線と突然変異
放射線は突然変異誘発の物理的要因の一つである。放射線で誘発される突然変異は、DNAに対する放射線のランダムなエネルギー付与に起因する直接的な鎖切断(直接作用)や、ラジカルなどを介した間接的なDNA分子の修飾(間接作用)が原因と考えられ、突然変異自体はさまざまなタイプ(表1 (a),(b))が存在するが、放射線誘発突然変異に特異的なタイプは知られておらず、自然発生突然変異と区別することはできない。


3. 遺伝性影響
放射線による突然変異誘発はランダムに起こるので、体細胞突然変異のみならず生殖細胞突然変異も起こりうる。よって親世代の放射線誘発突然変異が、子の世代に受け継がれる可能性があるため、これを遺伝性影響とよんでいる。

実験動物を用いた実験では、マウスの種類や発生の時期、放射線照射の条件によって次世代での奇形の発生率の増加や、発がん率の増加などが観察されている。一方、ヒトでは1950年代から原爆被爆者2世、放射線治療患者や放射線科医・技師の子供について、さまざまな項目での継世代影響に関する調査が行われているが、過剰な被ばくがない一般集団とのあいだに統計的に有意な違いはみられていない。
キーワード 遺伝子突然変異、染色体突然変異、ゲノム突然変異、体細胞突然変異、生殖細胞突然変異、自然突然変異、人為的突然変異
図表 表1 遺伝子突然変異
表2 染色体突然変異
参考文献
参照サイト
作成日 2018/02/28
更新日