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大分野 影響(生体応答・生物影響・健康影響を含む)
中分野 分子レベルの反応
タイトル 分割照射
説明 放射線の1回の照射量を少なくして、何回かに分けて照射することをいう。
放射線の生物学的効果で問題となるのは、放射線が生体構成物質に吸収されたエネルギーの量(吸収線量)と単位時間当りの吸収線量線量率)である。同一の吸収線量であってもその生物学的影響は線量率によって大きく異なってくる。放射線が生物に与える効果は、一般にその線量率が低くなるにしたがって小さくなる(線量率効果)。高線量率で短時間に照射(急照射)することにより得られる生物効果と比べて、同じ種類の放射線を線量率を下げて分割して(あるいは時間をかけて)照射した場合には効果が減弱するので、より多くの線量を照射しないと同じ効果は得られない()。これは照射と照射の間に、受けた傷害が回復するためと考えられている。分割照射における回復は、亜致死損傷(SLD)が修復された結果であるので、亜致死損傷回復(SLDR)といわれる。生成する傷害の質が異なる低LET放射線(X線やγ線)と高LET放射線(α線や中性子線)とではその回復の程度が異なる。高LET照射の方が障害が重く、回復の程度が非常に低いため、線量率効果は期待できない。
また、放射線治療では、腫瘍細胞(組織)と正常細胞(組織)とのわずかな感受性の差と回復力の差に着目し、その差を拡大することで治療効果を上昇させることが期待できる。分割照射(法)はこの点で優れていることから、がんの放射線治療においても用いられている。腫瘍に対して最大限の損傷を与える一方、正常組織の損傷を最小限にとどめる必要があるため、両組織のごくわずかな回復能の差を利用して放射線を小線量ずつ、間隔をおいて分割照射することにより、正常組織に対する損傷を軽減させるようにしている。
キーワード
図表 図:分割照射による細胞の生存率の回復
参考文献 ・原子力百科事典ATOMICA
https://www.rist.or.jp/atomica/data/dat_detail.php?Title_Key=09-02-01-02
参照サイト
作成日 2017/10/16
更新日