提供: SIRABE
大分野 | 影響(生体応答・生物影響・健康影響を含む) |
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中分野 | 細胞・組織・個体レベルの影響 |
タイトル | 発がん |
説明 | 広義には、疾病としての「がん」の発生や、腫瘍としての「がん」の発生を意味し、また狭義には正常な細胞ががん細胞(腫瘍細胞)に転化することを意味している。 多くの場合、がんは正常な細胞の変異によって生じた1個の異常な細胞に由来する。転移したがんでも、通常その起源を1個の原発腫瘍までたどる事ができる。がんのきっかけとなる要因は様々だが、共通している点は、DNAに損傷を与えて変異を起こさせるということである。この変異を誘導する要因として、ウイルス、発がん性化学物質、放射線の三つがある。これらの要因によって変異を受けた特定の遺伝子が活性化し、あるいは不活性化されることが発がんの引き金になる。がんでは、1個の変異細胞から生じた異常な細胞集団が、変異と淘汰を繰り返すことで次第に悪性化していくと考えられている。この変異を繰り返していく過程にはかなりの時間が必要で,正常な生物個体中でがんが発症するには、偶発的な複数の変異と、様々な生体内の調節機構や防御機構から逃れる事が必要であり、本来、生体内においてがんは簡単には発症しないと考えられる。 従来、発がんに至るプロセスは、イニシエーションとプログレッションからなる発がんの2段階説で説明されていたが、近年は、発がんの多段階説で解釈されている。がん細胞は、正常な細胞の遺伝子に2個から10個程度の変異が蓄積することにより発生する(一説には、平均で90個の遺伝子変異を蓄積しているとも言われている)。これらの遺伝子の変異は一度に誘発されるわけではなく、長い間に徐々に誘発されるということも分かっていて、正常細胞からがん細胞に向かってだんだんと進むことから、「多段階発がん」といわれている。 発がんの引き金は遺伝子の損傷の蓄積だが、損傷によって、細胞を増殖させるアクセルの役割をする遺伝子が、必要ではないときにもアクセルが踏まれたままになるような場合(がん遺伝子の活性化)と、細胞増殖を停止させるブレーキの役割をする遺伝子が効かなくなる場合(がん抑制遺伝子の不活化)がある。また、遺伝子のDNA(塩基)配列に異常が生じる突然変異に加えて、DNA(塩基)配列自体は変わらなくても機能に変化を起こすようなエピジェネティック変異があることも分かってきた。こうした異常の積み重ねにより、がん細胞ができ上がってくると考えられている。 「発がん」に類似した言葉として「がん化(malignant transformation, neoplastic transformation)」があるが、この場合は、培養細胞を用いた試験管内発がん実験で培養細胞の形態が悪性形質転換することを示しており、厳密には「発がん」と区別されて用いられている。このように、「がん」と仮名書きされている場合は主に臨床的な疾病を、また「癌」と漢字で記述されている場合は主に肉塊としての悪性腫瘍そのものを示すことが多いが、厳密に区別されて用いられているわけではない。 |
キーワード | 多段階発がん機構、がん遺伝子、がん抑制遺伝子、エピジェネティック変異 |
図表 | 図1:多段階発がんの仕組み |
参考文献 | ・国立がん研究センター がん情報サービス https://ganjoho.jp/public/dia_tre/knowledge/cancerous_change.html |
参照サイト | |
作成日 | 2018/02/28 |
更新日 |
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