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大分野 放射線防護
中分野
タイトル 環境防護の枠組み
説明 国際放射線防護委員会(ICRP)は1977年の勧告において、「〔14〕人間が適切に防護されれば、他の生物もまた十分に防護されるであろうと信ずる」としても、初めて環境中生物の放射線防護を取り上げた。その後、世界的に環境リスクに対する公衆の懸念が高まり、2003年には「Pub. 91 ヒト以外の生物種に対する電離放射線のインパクト評価の枠組み」がICRPから刊行された。そして、放射線が環境に影響を与えていないことを、十分な根拠に基づいて透明性の高い実証的プロセスによって明らかにすることが求められるようになり、2005年には環境防護を領域とする第5専門委員会が立ち上げられた。環境防護の枠組み構築には、この第5専門委員会が中心的役割を担った。(ただし、第5専門委員会は2017年6月に解散となり、2017年7月以降、環境の防護は第1、第2、第4委員会でも扱うことになった。)

環境防護には普遍的な定義が存在せず、国や文化によってその概念が異なる。その概念のギャップを埋めるために、環境防護の枠組みが構築された。環境防護の目的は、生物多様性の維持、種の保全、群集および生態系の健全性を維持することであり、この目的を達成するために、早期の個体死、罹患、繁殖率、染色体損傷をエンドポイントとした影響評価体系が示された。環境中の生物は多種多様で、それらすべてについての影響評価は不可能であるため、人の防護における「標準人」に相当する「標準動植物」の概念が導入された。標準動植物は分類学上同一の「科」に分類される仮想的な存在であり、標準動植物の導入は現存する同じタイプの生物に対して、被ばく-線量-影響を関連付けるために使用することを目的としている。

ICRPは、標準動植物が受ける線量を計算するツールとして、放射性核種が体内外で均一に分布していると仮定した場合の線量換算係数(Dose conversion factor, 〔(μGy/日)/(Bq/kg)〕)を導き出した。そして、放射線影響を考慮すべき線量であるか判断するための目安として、標準動植物の誘導考慮参考レベル(Derived Consideration Reference Levels; DCRL)(mGy/day)を導入した。様々な状況を考慮して環境防護に費やす労力を最適化できるように、DCRLは影響の閾値としての線量限度ではなく、影響が予想される線量率を範囲として示している。
キーワード 標準動植物、誘導考慮参考レベル
図表
参考文献 ICRP, 環境防護 標準動物および標準植物の概念と使用, Publication 108 〔1〕、〔13〕、〔16〕、〔195〕 (2017)
ICRP, 国際放射線防護委員会の2007年勧告, Publication 103 〔366〕 (2009)
参照サイト
作成日 2019/03/01
更新日