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問 | 放射線リスク評価において、広島・長崎の原爆被爆者の疫学研究はどのように位置付けられているのでしょうか。 |
答え | 原爆被爆者の寿命調査研究は、もっとも信頼性の高い疫学データであり、放射線安全基準の基礎となる調査研究データとして、UNSCEARにおける放射線健康リスク評価やICRPが勧告する放射線防護体系の中核を支えるものとなっています。 広島・長崎の原爆被爆者の健康影響調査は、ヒト集団への放射線影響を評価する無二の疫学研究として広く認められており、公益財団法人 放射線影響研究所により継続して調査が実施されています。21世紀に入ってからも、原爆による個人の被ばく線量の再評価(DS02)が行われ、心臓血管系疾患をはじめとして甲状腺疾患、肝疾患、子宮筋腫、白内障など非がん病変と放射線被ばくとの間に中高線量において有意な線量-反応関係が示唆されたり、免疫系への影響と被ばく線量に関係が示唆されたりするなど、新たな放射線影響に関するトピックスが見出されつつあります。 1945年8月の原爆被ばく以来、70年以上が経過し、被ばく当時胎児あるいは乳幼児だった被爆者の大半が70歳以上となり、被ばく時年齢による放射線リスクの修飾効果等が明らかになることが期待されます。 放射線被ばくをした集団に関する疫学研究は数多くありますが、原爆被爆者の寿命調査研究(Life Span Study: LSS)は以下のような特長を有しています。 (1)調査対象コホートが大きいこと(広島・長崎の被爆者9万4千人と対照として非被爆者2万7千人の計約12万人)、 (2)追跡調査期間が長いこと(1950年以来今日まで)、 (3)男女ほぼ同数で各年齢層にわたっていること、 (4)疾病や職業が限定されていないこと、 (5)被ばく線量域が広いこと、 (6)個人被ばく線量推定の精度が高いこと、 (7)フォローアップ(がん罹患および全死亡)の完全性が高いこと などです。 |
キーワード | 原爆被爆者 |
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参考文献 | 低線量放射線と健康影響(放射線医学総合研究所 編著) 放射線被曝者医療国際協力推進協議会 編、原爆放射線の人体影響 改訂第2版、文光堂、東京、402p(2012) |
関連サイト | https://www.rerf.or.jp/ 公益財団法人 放射線影響研究所 |
作成日 | 2019/02/28 |
更新日 |
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