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大分野 影響(生体応答・生物影響・健康影響)
中分野 細胞・組織・個体レベルの影響
タイトル 体細胞分裂
説明 人の体は、約30-60兆個の細胞でつくられている。最初は一つの受精卵から始まり、以後「細胞分裂」が繰り返されて、人の体が形成されていく。細胞には大きく分けて2種類の細胞がある。卵細胞、精子細胞(およひ゛その前駆細胞)のように、子孫を残し、遺伝情報を次の世代に伝える役割を担う「生殖細胞」と、生殖細胞以外のすべての細胞を指す「体細胞」である。生殖細胞が行う細胞分裂のことを「減数分裂」と呼び、体細胞が行う細胞分裂のことを「体細胞分裂」と呼ぶ。減数分裂は、精子や卵子などの配偶子を作り出すための分裂様式である。精子や卵子などの配偶子は1組のみの染色体しか持たず、互いに受精することで1+1=2倍体の新しい受精卵が作り出され、生命誕生に至る。したがって、減数分裂の過程では、染色体数を半減させる(2倍体→1倍体)必要がある。一方、体細胞分裂は、もとの1個の細胞(母細胞)から、それと同一の細胞(娘細胞)を2個生み出す分裂様式であり、その過程では、母細胞において、遺伝情報の源である染色体DNAを正確にコピーして2倍にした(DNA複製)後、細胞の分裂時に、染色体DNAや細胞小器官を2つの娘細胞に均等に分配することを必要とする。したがって、体細胞分裂の前後では、染色体数は変化せず(2倍体→2倍体)、この部分は減数分裂との大きな違いである。体細胞分裂は、(1)間期(DNA合成準備期(G1期)、DNA合成期(S期)、分裂準備期(G2期))、(2)核分裂(前期、中期、後期、終期)、(3)細胞質分裂からなり、細胞質分裂の終了により、体細胞分裂が完了する。放射線影響の観点からは、体細胞分裂を行う体細胞において放射線によるDNA損傷遺伝子異常が生じた場合には、影響が発現するとしても、被ばくした本人に限られ、 次の世代には遺伝しないのに対し、生殖細胞において放射線によるDNA損傷と遺伝子異常が生じた場合には、被ばくした本人の子孫(次世代)以降にその遺伝子異常が受け継がれ得る。しかし、現在までに、広島・長崎の原爆被爆者に関する疫学調査の結果、遺伝性影響の発生率が統計的に有意に増加することは認められていない。
キーワード 細胞分裂 減数分裂
図表 図1 体細胞分裂と減数分裂
参考文献 DRESA「低線量放射線安全評価データベース」(2000年度制作 企画:文部科学省 制作:日本原子力研究所)
参照サイト
作成日 2020/12/01
更新日