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大分野 防護(放射線管理・規制を含む)
中分野 疫学・リスク評価
タイトル ALPS処理水
説明 1.ALPS処理水
東京電力(TEPCO、現・東京電力ホールディングス)福島第一原子力発電所(福島第一原発)では、2011(平成23)年の原発事故にともなって地下水や雨水などが建屋内の放射性物質に触れることや、溶け落ちた燃料(燃料デブリ)を冷却した後の水が建屋に滞留することにより、放射性物質を含む汚染水が発生している。汚染水中の除去対象放射性核種には、核分裂生成物(核分裂により生成した核種)から56核種と腐食生成物(原子炉冷却系等で使用している金属が放射化された後、腐食により溶出した核種、放射化物)6核種の計62核種がある[TEPCO、2021]。これらの核種は、多核種除去設備(Advanced Liquid Processing System、ALPS)等の浄化装置によってトリチウム以外の放射性物質を取り除く処理を行い、「ALPS処理水」として福島第一原発の敷地内のタンクに貯蔵してきた。この貯蔵タンクが増加し、この敷地を大きく占有する状況の中、その処分が課題となり、2021(令和3)年4月13日に開催した「廃炉・汚染水・処理水対策関係閣僚等会議」において、2023(令和5)年を目途に、ALPS処理水を海洋放出する方針が決定された[首相官邸、2021]。ALPS処理水の処分には、2次処理や希釈によって、トリチウムを含む放射性物質に関する規制基準を大幅に下回ることを確認し、安全性を確保することとしているが、規制基準値を超える放射性物質を含む水、あるいは汚染水を環境中に放出するとの誤解が一部にあり、そうした誤解に基づく風評被害を防止するため、2021(令和3)年4月13日に経済産業省より「トリチウム以外の核種について、環境放出の際の規制基準を満たす水」のみを「ALPS処理水」と呼称する[経済産業省、2021]ことになった。なお、この処理水中には上記62核種の他に炭素−14(C-14)およびトリチウムも含まれる。

2.ALPSによる核種除去システム
ALPSは、薬液、活性炭や機能性材料(吸着材)による吸着などの物理的・化学的性質を利用した処理方法により、トリチウムを除く62核種の放射能濃度を告示濃度限度未満まで、除去汚染水に含まれる放射性核種を低減する能力を有するとしている。除去設備は、前処理設備と多核種除去装置からなる。前処理装置では、α核種、Co-60やMn-54の除去する鉄沈殿処理や吸着阻害するマグネシウムやカルシウムイオンや放射性ストロンチウムを除去する炭酸塩沈殿処理を行う。多核種除去装置では、コロイド状の核種(I-129やCo-60など)を吸着する活性炭、放射性ストロンチウムを吸着するストロンチウム吸着材、放射性セシウムを吸着するセシウム吸着材、ヨウ素酸イオンやSb-125を吸着するヨウ素-アンチモン吸着材、ヨウ素イオンを吸着するヨウ素吸着材とRu-106を吸着するルテニウム吸着材を有する吸着塔を通水させるもので、汚染水に含まれるトリチウムを除く62核種の放射能濃度を告示濃度限度未満まで低減する能力を有する[TEPCO、2021]。
キーワード 福島第一原発事故 放射性核種
図表
参考文献
参照サイト ・TEPCO、 ALPS処理水の現状及び放出方法等について、2021年6月18日(2021)https://www.env.go.jp/content/900544140.pdf
・経済産業省、東京電力福島第一原子力発電所におけるALPS処理水の定義を変更しました、2021年4月13日(2021)
https://www.meti.go.jp/press/2021/04/20210413001/20210413001.html
・首相官邸、廃炉・汚染水・処理水対策関係閣僚等会議(第5回)、2021年4月13日(2021)https://www.kantei.go.jp/jp/singi/hairo_osensui/dai5/gijiroku.pdf
作成日 2022年12月
更新日