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問 | トリチウム水を大量に飲んでしまった場合、どうしたらよいですか? |
答え | トリチウム水を大量に摂取し、被ばく低減化の治療を要する状況となった場合の治療法について記します。 トリチウム(化学形を「水」とする)の摂取は、経口摂取、吸入、傷口または正常皮膚からの吸収が考えられています。体内に摂取されたトリチウムは、97%が体内の水と平衡し、実効半減期約10 日で減っていきます。残りの3%は、有機分子に取り込まれ、実効半減期約40日で減っていきます。したがって、トリチウムの物理学的半減期は12.3年ですが、実効半減期ははるかに短く、10日以下とされています。 多量に摂取した場合の治療法は、通常の水(実質的にはトリチウムの入っていない水)を体内に負荷することです。 IAEAのマニュアル、EPR-Internal Contamination 2018[IAEA,2018]によると、摂取の場合の治療法は、トリチウムの代謝を速める目的で、1日3 - 4Lの水を摂取させます。 これにより、希釈効果があり、また利尿を促進することで排泄を促進します。飲水の増量により、実効半減期は、10日から2.4日に短縮できます。多量の摂取の場合、経静脈的水負荷と利尿剤の使用が考えられますが、この治療のリスクとの兼ね合いになります。治療の前後で、尿のバイオアッセイにより、体内のトリチウム量をモニターし、治療の効果を確かめます。トリチウムの場合、尿中のトリチウム濃度が、そのまま体内水中のトリチウム濃度と考えられます。 NCRP Report 161I[NCRP,2008]でも推奨されている治療は、1 日3 - 4L の水負荷であり、多量摂取の場合時に1日6 - 10Lまで増量することもあるとされます。この治療を5 日間連続するとされています。多量摂取の場合、経静脈投与と利尿剤も可能とされます。これらの場合も、心不全などの禁忌に注意が必要です。 効果についての評価はされていないが、トリチウムの急性摂取に対して、上記の水負荷と利尿剤での治療例が報告されています。[Chen W, 2019] 従って上述のように、摂取時の治療法は、飲水または時に経静脈的による水負荷と利尿剤により体内のトリチウムを希釈、置換していくことになります。 |
キーワード | 緊急時 |
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参考文献 | ・International Atomic Energy Agency (IAEA), Medical Management of Persons Internally Contaminated with Radionuclides in a Nuclear or Radiological Emergency ---A Manual for Medical Personnel---, EPR-Internal Contamination 2018. IAEA, Vienna, Austria, (2018) ・National Council on Radiation Protection & Measurements (NCRP), NCRP Report No. 161I: Management of persons contaminated with radionuclides: Handbook, NCRP, Bethesda, MD, USA, (2008) ・Chen W., Medical Treatment and Dose Estimation of a Person Exposed to Tritium. Dose-Response, 17(4):1-5, (2019) |
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